歌ってみた How to Mix

『歌ってみた』初心者向けのボーカルMix手順

あくまで初心者向けに書いてみました。
長くなってしまいましたが、お時間のある時にご参考にまで。

歌ってみたの動画を作りたい!!
機材も購入して、収録してみた。
納得できる歌が収録できたけど、なんか声がオケに馴染まない。。。

まず、よくある悩み『ボーカルMix』を普段行なっている手順で、なるべく簡単に書いてみます。

現在、AIが自動処理をしてくれるプラグインが多くでています。
コンプ、EQ、空間処理をしてくれて、とても助かります。

反面、それぞれ声質、クセ、録音環境も違うので、誰でもイメージ通りの処理をAIがやってくれる訳ではありません。
(プロのエンジニアが行なっても苦労します。)
適切なボーカルMixには、個々の特徴やジャンルに合わせて、細かな調整を積み重ねていくことが必要です。(なるべく簡単にと言いながら、ゴメンナサイ。)

よくあるお悩みで、オケに馴染ませようとしたら、お風呂場見たいなリバーブになってしまった。ボーカルがオケに埋もれてしまう。逆に浮いてしまう。といったところが多いでしょうか。
『歌ってみた』の場合、出来上がっているオケにボーカルを添わせることが必要です。ボーカルのみの質感で調整してしまうと、派手なオケに負けてしまう。綺麗な曲なのに、コンプのかかり過ぎで、ボーカルだけ前にいる。などちょっとチグハグになってしまいます。

では、実際のボーカルMixの手順です。

1- DAWのBPMを合わせる。
Mixを始める前にDAWとオケのテンポ(BPM)を合わせましょう。
後々、ディレイなど空間エフェクトを曲に合わせるため。また、ボーカルのタイミング修正がしやすくなります。

2- タイミング補正
DAWのグリッドに合わせるのも手法のひとつですが、それだと機械的になってしまいます。曲によって、前のり、後のり、シャッフル、ハネなどグルーブ感があります。
また、歌い方によって、DAWのグリッドよりも少しずらした方が気持ち良い場合もあります。実際に曲を口ずさみながら補正していくと、自然とグルーブ感が見つけやすいかもしれません。
ほか、楽器がどんな演奏をしているのか聞きながら、ボーカルを合わせていくと曲にマッチしたグルーブが出せることが多いです。
反対にエレクトロ系の曲は、ガチガチにDAWのグリッドに合わせていく方が雰囲気が出る場合もあります。

実は音程よりもタイミング補正のみで、かなり歌が上手に聞こえるようになるはずです。リズムがしっかりしていると曲にノレているので、グッと聞きやすくなるはずです。

3- ノイズ除去
デジタルでの収録、編集、ミックスから最終的にもデジタルデータでリスナーさんへ届けられることがほとんどです。ノイズもくっきり聞こえてしまいますので、収録では気にならなかったノイズを除去します。プラグインで一発除去も可能ですが、やはり音質劣化にもなってしまいます。できれば、波形を拡大して一つずつ削除していくのがベターです。

大まかにタイミング補正とノイズ除去をすると、少なくても数百箇所の細切れになってしまいます。とても地味な作業ですが、仕上がりに影響しますので頑張りましょう。

4- 音程修正
外してしまった歌をごまかすというイメージがありませんか?
もちろん、音程をあてて修正するのも大切ですが、『歌ってみた』ではオケにボーカルを添わせていくことが重要です。

いわゆる打ち込み音源がほぼ100%のオケって、生楽器と違いピッチが正確なんです。音程のユレやズレがないので、その中でちょっとだけでもボーカルの音程がずれると、浮きの原因にもなってきます。そうならないよう、ボーカルの小さなズレをオケに添わせて補正ます。

ピッチ修正には定番でMelodyneやAutoTuneというプラグインを使う方が多いのではないでしょうか。Melodyneの方が使い慣れていることもあり、個人的にはほぼMelodyneを使用しています。

モニター環境も重要で、モニタースピーカーの低音が多かったり、大きな音で聴いているとピッチのズレが聞き取りにくくなります。ヘッドフォンだけでも迷子になりますので、スピーカーとヘッドフォンを併用して、正確なモニター環境作りも必要です。

ここまでのタイミング補正、音程修正を必要に応じて繰り返します。プロの現場では、(例外もありますが)複数回繰り返して下準備を行います。

5- 音質調整
下準備が整ったら、やっとMix工程に入ります。

大まかにコンプ、EQ、ディエッサーを使い、音質を調整します。
コンプレッサー:音量のバラつきを抑える
EQ:ボーカルの明るさ、太さなどの調整
ディエッサー:高域の歯擦音を抑える
といったことをしていきますが、実際どのくらいにすれば?という疑問があるはずです。

まずご自身が好きな、参考にできる音源を聴いて、オケとボーカルの音量を合わせてみてください。(かなり荒っぽいですがボーカルは小さすぎるよりは大きいすぎる方が良いようです。)
この時点では、ボーカルが聞こえにくい箇所があるはずです。次にコンプレッサーを使い音量を整えます。種類、メーカーなどによって色々ありますが、定番のUniversal Audio 1176系だと大まかに最大ゲインリダクション(GR)を−5dB位に収まるように調整すると、自然な感じに収ります。

コンプレッサーは大きな音を抑えますので、音量が下がった感じに聞こえます。コンプレッサーがをかけた後の音量が、かける前の音量と同じになるようOUTPUTを調整します。
ある程度、コンプレッサーで音量のバラつきが整ったら、EQで音色の処理をします。
大まかな周波数帯のイメージです。

80Hz〜200Hz:量感、重み
200Hz〜500Hz:太さ。こもっていたら少しカットしてみる。
500Hz〜1kHz:耳につくところ。コンコン聞こえるので、大きくすると前に出てくる。
1kHz〜3kHz:子音。埋もれてしまっていたらこの辺りをブーストすると前に出てくる。
3kHz〜:空気感、艶など。

ディエッサーは、高域が耳障りであれば使用します。反面、コモりの原因にもなりますので、注意してください。
音質を調整したら、リバーブやディレイをかけます。
慣れていれば、デフォルトからパラメーターを操作し、好みの音が作れるようになるはずですが、時間と場数が必要ですので。。。

プリセットを選んでいって、2,3箇所パラメーターを少し動かす程度で良いものを探てみましょう。プリセットは、世界的にも署名なエンジニアや各メーカーが資金と時間を使って作ったものです。的確に使用すれば、優秀な音ができるはずです。

また、1つのリバーブやディレイのみではなく、種類の異なるプラグインを使用してみるのも手です。

6- オートメーション
ここまでで、かなり完成に近づいているはずです。
ボーカルの音量を一定にするのではなく、曲の盛り上がりに沿って音量を調整します。
また、1音聞こえないだけでも違った意味になってしまいますので、言葉を大切に聴き取りやすくなるよう、丁寧に調整します。

7- マスタリング
YouTubeや多くのストリーミングサービスでは、ラウドネスノーマリゼーションという仕組みを使い、曲ごとの音量調整をしています。
マキシマイザーでいくら音圧を上げても、規定以上の音量は下げられてしまいます。

YouTube:14LUFS
ニコニコ動画:15LUFS
という音圧で規定がありますが、『歌ってみた』動画の場合、なるべく大きな音圧が好まれる傾向です。

お疲れ様でした!!
これで、『歌ってみた』初心者向けボーカルMixは終了です。
この作業量で、1日ほど、ボーカルトラックが多いと数日かかることは普通です。
手順、プラグインなどにこうしなくてはいけない。というものはありません。

普段、私が行っている基本的な手順を記しただけですので、参考程度にしていただきご自身の手法を作っていただけますと幸いです。
ZeroStudio-tokyoでは、歌い手の個性、ニュアンスと言葉を大切にミックスを行います。
個人法人さま問わずお手伝いをさせていただいております。

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